ニューロマーケティングとは?特徴や調査方法、問題点などを解説
2022.12.1そのため、少しでも自分に不必要だと判断された情報は削除されてしまう一方、必要だと判断された情報は何度も検索されます。
企業にとって、商品やサービス、告知においてもいかに一瞬にして生活者の心に訴えかけられるか、無意識のうちに必要だと感じさせるかが重要なカギを握っています。
現在、脳科学の知見や技術を利用して、生活者の心理や無意識、行動原理を分析したマーケティング手法である、「ニューロマーケティング」が注目されています。
そこで当記事では、ニューロマーケティングの特徴やメリット、調査方法などを解説します。
目次
ニューロマーケティングとは
ニューロマーケティングとは、脳科学の様々な手法を活用して、生活者の心理や好みなどを分析しマーケティングに取り入れようとする方法のことを指します。
従来、生活者が商品を購入したり、サービスを利用する際、価格やデザイン、機能性や品質などが選択のきっかけと考えられてきました。
しかし、実際には「なんとなく」選ぶ人が少なくありません。
「デザインがよかったから」「機能性が優れていたから」といった理由があったとしても、「なぜそのデザインをよいと感じたのか」「なぜその機能性が優れていると感じたのか」と問われると、「なんとなく」と答えてしまう人が多く、この言語化される以前に感じられている「なんとなく」は、これまで分析が不可能とされてきました。
しかし、脳内に生じている電気信号や言語化以前の感情を脳科学で解明したものがニューロマーケティングであり、様々な分野において注目が集まっているのです。
ニューロマーケティングのメリット
生活者の無意識を理解することができる
生活者の行動の多くは、言語化し意識する以前に決まるとされています。
つまり、生活者の潜在意識に働きかけるマーケティング活動を行うことができれば、大きな効果を期待することができます。
ニューロマーケティングでは、脳科学の様々な知見や手法を活用して、生活者の潜在意識を分析することが可能なため、表層的なアンケート調査では知ることができない、無意識を解明することができます。
そのため、商品開発や広告・宣伝活動、顧客満足度の向上など、様々な企業活動のシーンにおいて応用することができます。
生活者の感情の変化をデータ化できる
生活者の気持ちを推し量るために、これまでのマーケティングではヒアリングやアンケートなどが実施されてきました。
しかし、時系列に沿って、どのようなことがきっかけとなって感情が変化するのかといったことまでは把握が難しいとされてきました。
しかし、ニューロマーケティングでは、脳波や脈拍数などの生理指標データや生活者の心身の変化である行動指標から、感情の変化がどのような流れで生じたかを解明することができます。
このように、ニューロマーケティングでは、生活者がどのようなシーンで感情が変化するのかデータ化しながら把握することができるため、商品の「認知、興味、検索、欲求、記憶、購入」といった購入行動における意思決定のプロセスを分析し、可視化することが可能になります。
ニューロマーケティングで活用されている指標とは
生理指標
人間がコントロールできない生体反応を数値化したもので、例えば
・脳波
・心拍数
・脈拍数
・血液量
などがそれにあたります。
生体反応は潜在意識と密接に結びつきながら変化するため、感情分析の際に極めて重要な指標となります。
生活者が商品やサービスを見て示す一瞬の反応や、言語化以前の評価など、被験者本人が気づかない要素を発見することも期待されています。
行動指標
生活者の心身変化を分析するもので、例えば
・商品を認知し、何らかのリアクションを起こすまでの時間
・広告を見たり、読んだりする際の目線の動き
などをデータ化することができます。
行動指標を分析することで、自然な心身変化を働きかけ、無意識のうちに購入意欲を高める店舗レイアウトや広告をつくりだすことができます。
主観指標
ヒアリングやアンケートなどの従来のマーケティング手法をニューロマーケティングと組み合わせたもので、生活者の購入行動など効果が期待されています。
ニューロマーケティングの3つの調査手法とは
アイトラッキング
アイトラッキングとは、視線や眼球の動きを計測する調査手法のことを指します。
視線や眼球はどこに集中しているのか、視線や眼球はどのように動いているのか、いつ視線や眼球を動かしたのかなどの情報をつかむことができます。
アイトラッキングを活用することで、例えばネット広告を見ているときの視線や眼球の動きを分析し、広告効果を測定するなどの実験も可能になります。
表情認識
表情認識とは、顔の表情から感情を解析し、目や唇の動きなどを計測する調査手法のことを指します。
例えば、被験者が広告を見たときの目や唇の動きなどを分析し、広告や商品に興味を持ってもらえているかを判別しながら、広告効果を分析する際のデータとして利用することができます。
fMRI(脳活動測定)
fMRIはfunctional magnetic resonance imagingの頭文字を取ったもので「脳活動測定」のことを指し、MRIを利用して脳内の血液循環量を測定し、脳の活動を画像化する手法です。
脳内の神経活動を可視化し反応を測定することで、生活者の無意識に沸き上がった感情を把握することができます。
fMRIを用いることで、例えば広告効果等を測定する際の精度が、従来のマーケティング手法よりも高くなりますが、
・実施できる施設が限られている
・高額なコストがかかる
・操作の専門性が高い
などの問題点も挙げられます。
ニューロマーケティングが抱える問題点とは
倫理、安全面に関して細心の注意が必要
ニューロマーケティングは生活者個人の感情や潜在意識を脳科学の様々な手法を活用して分析します。
その際、先に述べた「生理指標」や「行動指標」を用いながら分析しますが、生理・行動情報は個人情報であるため漏えいに注意しながら、倫理的な側面において配慮が必要になります。
また、実験時においても被験者の心身に悪い影響を与えないよう、安全面でも細心の注意が必要です。
調査や分析のための知識・設備が必要
ニューロマーケティングを活用する際は、脳科学の知識や分析の際の技術力、また設備などが必要になります。
しかし、一般企業ではこのようなリソースを用意できないことの方が多いため、外部委託を検討せざるを得ません。
また、ニューロマーケティングには脳科学の知見や技術力に加え、マーケティングの知識も必要になるため、人材不足も問題点に挙げられています。
脳科学分野の情報は日々変化している
脳科学分野の情報は日々変化しているため、それまで有効とされてきた判断が無効となったり、常識だったものが正確性を疑われてしまうことも起こり得ます。
そのため、自社にとって適している調査・分析方法は何かということに常にアンテナを張り、常識や分析結果にとらわれず仮説検証を繰り返すことが重要になります。
まとめ
ニューロマーケティングを活用することによって、これまで漠然とされてきた、生活者の心の奥底に眠る潜在意識や無意識を分析することができ、効果的なマーケティング活動が可能になります。
しかし、生理・行動情報は個人情報であるため、倫理的にも安全面においても配慮が必要になります。
ニューロマーケティングは言語化以前の生活者の感情を把握することができるため、例えば商品開発や広告、パッケージデザインなど、様々なシーンに活用することができるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。