BtoBのカスタマージャーニーとは?活用方法や具体例を紹介!
2024.7.10カスタマージャーニーマップは、顧客の購買プロセスを整理するツールとして注目されています。
今回は、BtoB企業でのカスタマージャーニーマップの活用方法を解説していきます。
目次
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客の購買プロセスのことです。その道筋を旅に例えて”ジャーニー”と表現されています。商品やサービスを認知してから購入までのプロセスの中で、どのような行動や感情になるのかを分析するのが一般的です。
そのプロセスを可視化するために使うフレームワークを、カスタマージャーニーマップといいます。設定したペルソナについて、商品やサービスの認知から使用するまでのステージをいくつかに分け、それぞれの段階での行動や感情、接点を想定して対策を当て込んでいきます。
BtoBのカスタマージャーニー
BtoBとBtoCでは、購買に至るまでの意思決定のプロセスが異なります。そのため、カスタマージャーニーの考え方にも少し違いがあります。
例えば下記のような点で注意が必要です。
ペルソナ設定
BtoCのサービスであれば、ペルソナは言うまでもなく個人1人になります。
しかしBtoBのサービスは、基本的に企業などの組織を相手にします。組織の意思決定は1人で行うことはほとんどなく、担当者からその上司、さらに上司へと承認を取る必要が出てきます。
そのため、カスタマージャーニーを考えるときには、どの段階でどのペルソナにアプローチするかを具体的にイメージする必要があります。
検討プロセスの長さと内容
先ほどと同じく意思決定のプロセスが異なるため、検討プロセスの長さも異なります。
BtoCの場合は個人での意思決定になるため、本人が検討して良ければすぐに購入に至ります。しかしBtoBの場合は、担当者の検討の後に上司に相談したり、社内の稟議にかけたりする必要があり、検討には時間も工数も多くかかります。
また、検討の内容もロジカルになるため、導入メリットがより明確で合理的なものが選ばれます。複数の競合との比較や費用対効果の試算など、検討内容も多岐に渡るため、事前に想定しておくことも必要です。
顧客接点
BtoCサービスの多くは、店頭やweb上、広告などで顧客との接点を持つことが多いです。それに対して、BtoBサービスの場合は、主に営業担当との接点が中心になる場合が多くなります。
認知の段階ではTVCMやwebメディアがきっかけの場合もありますが、意思決定を進めていく段階で、組織の課題整理やそれに対する解決策を提示する営業担当の役割は、非常に重要なものです。
カスタマージャーニーマップを活用するメリット
カスタマージャーニーマップを活用することは、企業のマーケティングにおいてメリットが非常に大きいです。
BtoC企業でもメリットはありますが、今回はBtoB企業でのメリットを解説します。
顧客の購買プロセスを深く理解できる
カスタマージャーニーマップを作ることで、ペルソナの行動や感情、企業との接点が明確になり、全体を一覧で確認できます。
BtoBの場合、検討プロセスが何段階にも渡っており、ペルソナもそれぞれ別で考える必要があります。カスタマージャーニーの全体を把握することで、各ペルソナの状態が理解でき、適切なタイミングで適切な施策の実施が可能になります。
部署感で共通認識が生まれる
顧客との接点を持つのは、営業部署のみの場合が多いです。そのため、顧客の要望や温度感も含めて、顧客の認識について他部署には伝わらなくなってしまいます。
作成したカスタマージャーマップを関連部署全体で共有すれば、顧客についての認識が共有できます。顧客の状態や重視するポイントが共有できることで、商品自体の改善や、リードタイムの改善などがスムーズにできるかもしれません。
またそのような改善や対応策も、従来よりも素早く実施に踏み切ることが可能になります。
ペルソナの感情に寄り添った対策ができる
近年の消費者は、モノよりもコトを重視する傾向があり、購買プロセスにおける体験や感情も考慮する必要があります。
特にBtoBの場合は、段階別にペルソナを考える必要があります。各段階の顧客の行動や体験、感情まで分析できるカスタマージャーニーマップを活用すれば、特定のペルソナと接触したときにどう感じるか、どうすれば喜ばれるのかを考えられます。
軌道修正の指標になる
マーケティング施策の実施は、基本的にはPDCAを回して改善していきます。
当初の計画通りに成果が出ていない場合や、新たに課題が出てきた場合、カスタマージャーニーマップを指標に修正できます。
例えば、担当者にアプローチした後が繋がらない場合、想定していた行動や感情になっていなかったり、それに対する接点の持ち方が適切でないことが考えられます。他にも、担当部署は想定通り順調に承認を得られたのに、役員の同意が得られない場合、経営陣が目指す理想に対して課題の設定がズレていることも考えられます。
このように、設定したマップを元にどこが課題なのかを可視化し、次の施策を修正していくことが可能です。
カスタマージャーニーマップ作成前に理解すべきこと
企業はカスタマージャーニーマップによって、顧客の認知から購入までのプロセスを想定し、マーケティング施策を実施していきます。当然ながら、提供するサービスや商品が異なれば、その内容も変わってきます。
ここでは、カスタマージャーニーマップを作る前に理解しておくべきことを紹介します。
作成担当者が理解しておくべきこととしては、主に次の3つが挙げられます。
①目的とゴール
②ペルソナ
③カスタマージャーニーマップの種類
それぞれ解説していきます。
①目的とゴール
ここまで解説してきた通り、カスタマージャーニーマップは、顧客の商品認知から購買までのプロセスを整理することで、顧客への対応に活用するために作成します。
自社の商品やサービスがどのようなものか、どのような顧客を相手にするかによって、設定する目標や目的も多少異なります。
例えば、売上に直結させることを目指すのか、セミナーや体験会への参加者数を増やすことを目指すのかによって、プロセスが変わります。
自社の事業内容や取り巻く環境に合わせて、目的とゴールを設定することが必要です。
②ペルソナ
「ペルソナ」とは、マーケティング用語で「商品やサービス利用者の典型的なモデル」のことです。同じような意味で使われる「ターゲット」よりも詳細なモデル設定をします。
例えば、年齢、性別、学歴、職歴、居住地、家族構成などを設定していきます。場合によっては、好きなファッションブランドや通勤方法、趣味などもペルソナ設定に入れることもあります。
自社のサービスに合わせて、顧客の像をできる限り具体的に想定することが重要です。
③カスタマージャーニーマップの種類
カスタマージャーニーマップは、目的に応じていくつかの種類を使い分けることができます。今回は主な3つを紹介していきます。
①タイムライン型
②ホイール型
③スペース型
以下で詳細を解説します。
①タイムライン型
タイムライン型は、顧客の購買プロセスを時系列で整理したものです。カスタマージャーニーマップの中で最も広く使われています。
顧客が最初に商品と接点を持つときから、購入後の利用までの全工程を一連としてまとめて考えられます。
顧客の体験や検討プロセスが、複数の段階で分けられる場合に活用できます。
②ホイール型
ホイール型は、顧客の購買プロセスを循環型で整理したものです。
マップの中央に商品やサービスを配置し、周りにステージごとの顧客の購買プロセスを書き出すような形になります。
旅行サービスなど、繰り返し利用されるようなサービスで活用できます。一通りの購買プロセスが終わったあとに、顧客からのフィードバックを入れて改善できるところがポイントです。
③スペース型
スペース型は、顧客との物理的な接触場所を地図上で現したマップです。
上側に場所、下側に接触内容と顧客の行動や感情を記載するのが一般的です。
実店舗やリアルで行われるイベントなど、顧客が移動して商品やサービスと接触するもので活用できます。
このように、カスタマージャーニーマップは、商品やサービスの種類によって、最適な形を選択して使用可能です。
顧客の購買プロセスを理解し、最適な形で運用していくことが大切です。
BtoBのカスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップの作り方は、BtoCとBtoBで少し異なります。
今回は、BtoBのカスタマージャーニーマップの作り方を紹介します。
ペルソナ設定
まずはペルソナを設定するのですが、BtoCとは異なり、接触する相手が複数人の場合がほとんどです。そのためペルソナも、段階に分けてそれぞれ設定する必要があります。
企業を相手にする場合、最初は窓口の担当者をペルソナに設定することが多いでしょう。決裁者に至るまではいくつか段階を踏まなければなりませんが、担当者を味方につければ、その後の決裁がスムーズに進む確率を上げられます。
また、ペルソナを設定する際には、業界特性や企業文化、事業内容も踏まえて想定することも必要です。担当者個人のペルソナに関しては、役職や決裁の範囲、普段担当している業務範囲を把握することが大切です。
購買行動の整理
顧客の購買行動を各フェーズに分け、時系列で並べていきます。BtoBの購買行動は、BtoCに比べて決裁や検討プロセスが多い傾向があります。
BtoBの購買行動は、例えば下記のように整理できます。
フェーズ | 題課 | 顧客の行動 |
認知 | いい解決策が知りたい | 広告やメディアで見かけたり、展示会で知ったりする |
情報収集 | 検討材料になる詳細が知りたい | 検索や問い合わせ |
比較検討 | そのサービスを客観的に判断できる材料が欲しい | 他社サービスについて、内容や価格などを調査して比較する |
意思決定 | 実際に導入できるかどうか確認したい | 商談を通して、条件のすり合わせや交渉をする |
社内稟議・承認 | 会社の承認を獲得したい | 社として検討するための材料をまとめ、稟議書の作成や社内会議で説明をする |
購入 | 社内で説明した通りに、導入に向けてスムーズに進めたい | 契約内容を再度確認した上で締結する |
評価 | 想定していた通りの成果が出るかどうか確認したい | 運用しながら効果を確認する |
リピート | 今後も求める成果が期待できるので、継続利用したい | 改善しながら継続的に利用する |
各フェーズの想定と、その時点で顧客が悩んでいることや課題、それに対する行動を埋めていきます。
カスタマージャーニーは、顧客目線でどのような行動を取るかを予測するものです。企業が求める行動をさせるものではないので、顧客目線で考えることを意識しましょう。
顧客の思考や感情を仮定
具体的なペルソナの行動プロセスが整理できたら、その顧客の感情を仮定して整理していきます。ポイントとしては、より具体的な状況を想定して書き出していくことです。
例えば、事務作業の業務効率が改善できずにいる企業があったとします。その時点での担当者は「困っている」状態です。
そんなときに業務改善ツールに出会ったことで、「期待」を抱きながら比較検討し、導入後は期待通りに改善ができて「嬉しい」気持ちになっているはずです。
自社の施策を計画
これまでに整理したマップに対して、自社はどのような施策を打っていくのかを計画します。
各フェーズでの顧客が思っていることや行動に対して、それぞれどのような策で対応していくのかを1つずつ埋めていきましょう。
例えば、社内稟議を通したいが、担当者がそのためのデータを持っていない場合は多いです。その場合は、社が重視する項目をヒアリングし、それに対応するデータと資料を作成して提供することもできます。
このように、購買プロセスがスムーズに進むように、課題に対して事前にアプローチしていくことが有効になってきます。
BtoBのカスタマージャーニーマップのポイント
繰り返しお伝えしてきた通り、BtoBでは、BtoCとは異なる意思決定のプロセスになります。
効果的なカスタマージャーニーマップ作成のために、事前に押さえておくべきポイントを紹介します。
比較検討を想定しておく
企業や組織では、合理的で根拠に基づいた判断をする必要があります。そのためコストのかかるサービスの検討には、基本的には複数の会社から提案を受けて比較検討をします。
初めから自社だけを検討するとは思わず、必ず競合他社も検討内容に入っていることを想定しておくことが重要です。
その際、ただ単純に自社と競合の比較をするのではなく、相手企業の担当者や決裁者が何を重視しているのか、それに対して自社や競合はどの部分でマッチしているのかなど、具体的に整理しておきましょう。
ターゲットに合わせて施策を変える
繰り返しになりますが、企業では購買プロセスの中で、意思決定のフェーズが複数人に渡って行われます。
どのフェーズでどのような人が何を重視しているのかを想定し、それに合わせて施策を考える必要があります。
例えば、担当者は多くの情報を集めて比較したい、決裁者は具体的な効果やコスト面を気にするかもしれません。その場合、担当者に対してはメルマガや説明会でのコミュニケーション、決裁者に対しては、必要性や効果を理解してもらうための資料、事例紹介などでのアプローチが有効になります。
見込み客や周囲の声を反映させる
カスタマージャーニーマップは、顧客が行動を元に施策を考えていきます。そのため、顧客の考えや感情部分の精度は非常に重要です。
自分の想定と、実際の顧客の声が異なることはよくあります。見込み客や成約済みの顧客にヒアリングをしたり、社内の別部署からの意見を参考にすることも有効です。
BtoBのカスタマージャーニーマップ活用事例
リコー
複合機をはじめとしたオフィス機器やデジタルサービスを提供するリコーの、ダイレクトマーケティングラボというメディアで紹介されているカスタマージャーニーマップです。
このマップを紹介しているコラムでは、最初にコミュニケーション対象者の設定を説明しています。カスタマージャーニーの最初のプロセスである「導入検討」の段階で、意思決定権者をコミュニケーション対象としていることが特徴的です。
これは「意思決定のスピードを上げ、自社の存在感を検討段階からアピールする」ことを目的としています。
ferret One
BtoBマーケティング支援の株式会社ベーシックが提供する、ferret Oneというサービスのカスタマージャーニーマップです。
ferret Oneでは、マップの右側の方が受注に近いため、優先的に課題解決のコンテンツを企画する必要があるとしています。
コンテンツを企画するにあたっては、見込み顧客が次のフェーズに移行するために必要なことを考えることが重要です。
まとめ
昨今のITツールの発達によって、個人だけでなく企業の購買プロセスも多様化しています。
似たようなサービスや商品であっても、会社や環境が異なれば、最適なマーケティング施策も異なります。また時代の流れに合わせて調整する必要もあります。
時代や商材に合わせた施策を実施するためには、顧客の購買プロセスをしっかりと理解することが重要です。カスタマージャーニーマップの作成で、効率的に施策の計画を行いましょう。